連結納税は上場会社など規模の大きな会社が採用する制度であり、中小企業が導入するにはハードルが高いと考えておられる経営者や経理担当者が多いと思います。
しかし、私は中小企業にこそ連結納税を適用するメリットが高いと考えております。中小企業の場合、オーナーの不動産管理会社があるケースなどグループ全体を見回すと、会社ごとの損益にバラつきがあるケースが多いためです。中小企業でも連結納税による節税をやるべき時代です。
当事務所は、連結納税の導入による有利不利判定、連結納税開始時の時価評価課税対応から連結納税後の連結納税申告、組織再編やM&A、そして連結納税下での税務調査対応、さらには税効果会計まで経験に裏付けされたアドバイスを提供することが可能です。連結納税に係る会計・税務処理に関してして疑問や相談があれば、是非、ご気軽にお問い合わせください。
連結納税を導入するにはメリットとデメリットを定量的評価と定性的評価の両側面から検討し、総合的な観点から有利不利判定するのが一般的です。
定量的評価のポイント
1.キャッシュフローの改善効果
2.法人税負担額の軽減効果(損益通算や税額控除等の利用)
3.実効税率の低減効果(繰延税金資産への影響)
4.繰越欠損金の解消スケジュールへの影響
5.連結納税開始のタイミングと連結対象法人の範囲
6.持株会社体制の有無
7.M&Aの頻度とその対策への影響
8.新規事業開始予定の有無
定性的評価のポイント
1.事務負担の増加の程度
2.グループにおける税務戦略への貢献
3.グループにおける処理の統一
4.子会社の税金計算担当者の能力レベルの程度
5.顧問税理士の関与の程度
6.決算スケジュールへの影響
連結納税のデメリットとして多くの会社が挙げられるのは、1.事務負担の増加、2.ヒューマンパワーの欠如、3.コストの増加です。
まず、事務負担についてですが、親会社のチェックに係る負担増が一番大きく、子会社の事務負担はそれほど変わらないことが多いです。これは親会社の担当者が子会社の税務申告内容を十分理解していないことが大きな原因です。ヒューマンパワーの欠如については、役割分担とチェックリストの活用により不足分を補う方法を採用しているところが多いです。
次に、連結納税申告書を作成するには、連結納税用の申告書作成ソフトが必需です。3社程度での連結納税なら手書きでも可能かもしれませんが、時間と手間がかかりますし、ヒューマンエラーの危険も高いためです。
連結納税ソフトですが、従来は、TKCの「eConsoliTax」、日立の「C-taxconductor」、豆蔵の「TAX-saver」の3つが有名でした。しかし、いずれも料金が高かったため、上場会社など規模の大きな会社による利用が多く、中小企業には負担が重いものでした。ところが、NTTデータ社より「連結納税の達人」が発売され、ソフトの料金も低く抑えることが可能となりました(約20~30万円程度)。連結納税の達人の発売により中小企業による連結納税採用のハードルはかなり下がりました。しかも、この連結納税の達人は税効果会計が標準価額に含まれています。これにより上場会社にとっても連結納税採用のハードルが下がったと言えます。
子会社から見た連結納税
連結納税の導入は親会社のほぼ独断で決定されることが多いと思います。親会社の方では十分な時間とお金をかけて勉強をし、準備をしていますが、子会社の方では、人手不足や勉強不足のまま日常業務をこなしており、ただでさえ決算時期は時間に追われるのが通常です。こんな状態で、さらに連結納税の勉強をする余裕はほとんどない(したくない)というのが正直な感想ではないでしょうか。
親会社の顧問税理士がすべての子会社の税務申告を見ているわけではありません。子会社は自分の身を守るために、連結納税に詳しい税理士をアドバイザーとして向かい入れるべきだと思います。